特別永住者が日本人と結婚すると国際結婚になるので結婚前に帰化したい
“特別永住者と結婚する場合は国際結婚になるんだろうか…”
このページに来て下さったということは、特別永住者の方と結婚する予定がある日本人、もしくは日本人と結婚する予定がある特別永住者の方ではないでしょうか?結論から申し上げますと、特別永住者と日本人の結婚は国際結婚になります!
この記事では、国際結婚になる理由や結婚の手続きなどをご紹介していきたいと思います。ぜひ、参考にしてみてくださいね。
まずはこの記事の理解を深めるために、特別永住者について少し知識を入れておきましょう。
特別永住者とは?
在留資格の中に「特別永住者」というものがありますよね。“あれ、永住者と特別永住者って何が違うの?”と感じる方もいらっしゃるかと思います。どちらも日本に長く住んでいる外国人ということに変わりはありませんが、両者には明確な違いがあります。
永住者:永住申請をして日本にずっと住む権利を持っている人
特別永住者:戦時中は日本人だった人
何となく理解できましたか?
日本は植民地支配していた国(朝鮮半島など)の人たちに日本国籍を与えましたが、その後戦争に負けて、日本の植民地ではなくなりましたよね。戦争が終わると同時に、植民地支配していた国の人々から日本国籍を取り上げましたが、当時日本に移り住んでいる人も多く本国に戻ることは難しいとの判断から、「特別永住者」という在留資格ができたのです。
そう、特別永住権は、第二次世界大戦終戦前から日本人として生活している在日韓国人・朝鮮人・台湾人とその子孫が日本に住むための権利なのです。
国家の都合で勝手に国籍を与えて勝手に取り上げるなんて、特別永住者の方からすればたまったもんじゃありませんよね。筆者もあまり詳しく知りませんでしたが、「特別永住者」という言葉の裏にはこういった歴史的背景があるんですね。
さて、少し話が逸れましたが、上記のとおり“特別永住者は、現在の法律上日本人ではありません”。そのため、特別永住者と結婚する場合は「国際結婚」になるんです。
では、国際結婚になる理由が分かったところで、特別永住者の方との結婚の手続きや必要な書類などを確認していきましょう。
(3ステップで完結)特別永住者と日本人の結婚の手続き
特別永住者と日本人の結婚の手続きは、大きく分けて3ステップです。
1.婚姻届けを提出する
2.本国に届け出を提出する
3.名字を変更する
では、一つずつ確認していきましょう。
1.婚姻届けを提出する
結婚が決まれば、日本の役所に婚姻届けを提出します。日本人同士の結婚の場合は「婚姻届出書」だけですが、特別永住者の方との結婚はあくまで国際結婚という扱いなので、必要な書類はこれだけあります。
日本人同士の結婚 |
特別永住者と日本人の結婚 |
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婚姻届出書 |
婚姻届出書 |
基本証明書 |
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基本証明書の日本語訳文 |
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婚姻関係証明書 |
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婚姻関係証明書の日本語訳文 |
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家族関係証明書 |
|
家族関係証明書の日本語訳文 |
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日本人配偶者の本籍地以外で届出する場合のみ、日本人配偶者の戸籍謄本または戸籍抄本 |
この数の違い!!
婚姻届出書は日本の役所で用意することができますが、その他の書類は本国から取り寄せて日本語に翻訳しなければなりません。
2.本国に届け出を提出する
日本の役所に婚姻届けを提出して“フー、安心”ではありませんよ。特別永住者の方は国籍が本国のままなので、本国に対しても“日本人と結婚した旨の報告”をしなければなりません。
その際に必要な書類は以下のとおりです。
※必要書類はケースバイケースです。
・特別永住者証明書
・本国の家族関係証明書・婚姻関係証明書
・日本の役所で婚姻届をしたことを証明するもの(受理証明など)
・日本の役所で婚姻届をしたことを証明するものを本国の言葉に翻訳した文書
3.名字を変更する
最近では、夫婦別姓もそんなに珍しいことではないのでそこまで名字にこだわらなくてもいいかと思いますが、国際結婚の場合は夫婦で別々の名字を名乗ることになります。しかし、名字が違うことで生活に支障が出るなど、何らかの問題がある場合は、同じ名字に変更することができます。変更手続きは、どちらに合わせるかによって変わるため、ここで確認しておきましょう。
日本人が特別永住者の方の名字に合わせる場合:家庭裁判所で名字の変更手続き
特別永住者の方が日本人の名字に合わせる場合:役所の外国人登録課で変更手続き
結婚するだけでこんなに大変なのか…。とため息が出そうになりますよね。しかし、これはあくまで“国際結婚として結婚する場合”です。もし、先に帰化申請をすれば、日本国籍を取得することができますよね。結婚する際も日本人同士の結婚になるため、手続きがグンっと楽になるんです。
特別な理由がない限り、先に帰化してから結婚しよう!
“どうしても本国に国籍を置いておきたい”など帰化申請を検討していない場合や、“どうしても先に結婚したい”という場合を除き、先に帰化申請をすることをおススメします。なぜなら、先に帰化した方が“結婚の手続きが圧倒的に楽になるから”です。
では、特別永住者の帰化申請に必要な要件を見ていきましょう。特別永住者なので「特別帰化(簡易帰化)」で帰化申請ができます。そして、帰化申請の際に満たさなければならない要件は以下の7つです。
1.居住要件…引き続き3年以上日本に住んでいること。
2.能力要件…成人に達していること。
3.素行要件…犯罪歴や過度な交通違反がないこと。
4.生計要件…日本で生活できる経済力があること。
5.重国籍防止要件…本国の国籍を喪失すること。
6.憲法順守要件…日本政府を脅かす団体に所属していないこと。
7.日本語能力要件…日本で生活できる日本語能力があること。
おそらく特別永住者の方は、日本に長く住んでいる方が多いと思います。そのため、何もしなくても「居住要件」「日本語能力要件」は満たしているかと思います。帰化申請は決して簡単ではないですが、揃えるべき書類を揃えていれば許可される確率も上がるんです。
その証拠に、以下をご覧ください。
年号 | 申請者数 | 帰化許可者数 | 不許可者数 | 許可の割合 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
合計 | 韓国/朝鮮 | 中国 | その他 | ||||
平成25年 | 10,119 | 8,646 | 4,331 | 2,845 | 1,470 | 332 | 85% |
平成26年 | 11,337 | 9,277 | 4,744 | 3,060 | 1,473 | 509 | 81% |
平成27年 | 12,442 | 9,469 | 5,247 | 2,813 | 1,409 | 603 | 76% |
平成28年 | 11,477 | 9,554 | 5,434 | 2,626 | 1,494 | 607 | 83% |
平成29年 | 11,063 | 10,315 | 5,631 | 3,088 | 1,596 | 625 | 93% |
参考元:法務省(帰化許可申請者数,帰化許可者数及び帰化不許可者数の推移)
あくまで帰化申請までに至った人の数なので、書類が揃わなかった方や要件を満たせなくて申請できなかった方は含まれていません。しかし、それでも8割ほどは許可されていますね。“ちゃんと要件を満たして書類を揃えれば、帰化許可は下りる”ということです。
しかし、一点デメリットがあります。それは、申請から審査結果が届くまで、どうしても8ヵ月~1年ほどかかってしまうということです。そのため、すぐに入籍しないといけない事情があるという場合は、結婚を優先した方がいいでしょう。
まとめ
今回は、日本人と特別永住者の結婚の場合の手続きや必要書類などをお伝えしていきましたが、いかがでしたでしょうか?
長い期間日本に住んでいる特別永住者の方との結婚の場合、日本人同士の結婚とほとんど一緒なように思えますが、法律上は国際結婚という扱いになってしまうんですね。
もし、結婚の手続きが面倒くさい!と感じるのであれば、先に帰化申請をするという方法もあります。ご自身の考えに合わせて、結婚や帰化を検討してみてくださいね。