社長や個人事業主の方の帰化申請が難しいと言われるワケ
一般的に、“社長や個人事業主の帰化申請は難しい”と言われています。そもそも帰化申請自体、ややこしい手続きが必要ですが、さらに難しいと言われてしまうと帰化申請するやる気すら失ってしまいますよね。
そこでこの記事では、必要書類やチェックされる項目から、社長や個人事業主の帰化が難しいと言われる理由を分かりやすく解説していきたいと思います
経営者の方で日本国籍を取得しようと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
社長や個人事業主の帰化は難しいの?
結論から申し上げますと、社長や個人事業主の帰化は“会社員よりは難しい”です。しかし、そこまで歴然とした差があるわけではなく、“確かに、会社員と比べてみるとちょっと大変だよね”くらいのレベルです。
と言っても、帰化申請自体かなりの書類が必要な上、申請許可が下りるまでに1年くらいかかるため、あまり気楽に考えると痛い目に遭ってしまいます。
事業主の帰化申請が難しいと言われているたった一つの理由
では、なぜ社長や個人事業主の帰化は会社員よりも難しいのでしょうか?
理由は簡単、“会社員よりも提出する書類が多いから”です。
当然ですが、提出する書類は多いより少ない方が楽ですよね。また、審査する側にしても、書類が少ない方が審査する項目が少なく、許可が下りる確率も高くなります。
ここで、帰化申請に必要な書類を簡単に見ていきましょう。
必要書類一覧 |
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本国や日本の役所で取り寄せる書類 |
帰化する本人が作成する書類 |
住民票の写し |
帰化許可申請書 |
国籍を証明する書類 |
親族の概要を記載した書類 |
親族関係を証明する書類 |
帰化の動機書 |
納税を証明する書類 |
履歴書 |
収入を証明する書類 |
生計の概要を記載した書類 |
公的年金保険料の納付証明書 |
事業の概要を記載した書類 |
上記に記載しているものは、会社員であろうが事業主であろうが、揃えなければならないものです。しかし、注目してほしいのが赤文字で書いてあるところ。社長や個人事業主は、「納税を証明する書類」が会社員よりも多いのです。では、それぞれ見ていきましょう。
(社長の場合)
まずは、会社員にはない法人経営者に必要な納税関連の書類を確認していきましょう。
・法人税納税証明書(直近3年分)
・消費税納税証明書(直近3年分)※前々年の売上1000万超える場合必要
・事業税納税証明書(直近3年分)※年290万以上で必要
・法人都・県・市・民税納税証明書(直近1年分)
・経営者個人の所得税納税証明書(直近3年分)
何だか色々とややこしそうですが、根気強く見ていきましょう。上記に記載している書類は、本人が社長でなくても役員に入っている場合は必要になります。また、同居している家族が経営者の場合も必要です。
ただし、※が付いている書類は、そもそも売り上げが課税対象になっていない場合は提出しなくても大丈夫です。
(個人事業主の場合)
では次に、個人事業主の場合です。
・所得税納税証明書(直近3年分)
・消費税納税証明書(直近3年分)※前々年の売上1000万超える場合必要
・事業税納税証明書(直近3年分)※290万円以上で必要
個人事業主の場合、法人経営者よりも必要書類は少ないですが、それでも会社員よりは面倒くさそうですね…。
そして、こちらも先ほどと同様、自身が個人事業主でなくても同居している家族が個人事業主である場合は必要になります。
余談ですが、以下の場合に当てはまる場合は、さらに「貸借対照表」「損益計算書」などの決算書のコピーが必要になる場合もあります。
・自身または家族が会社の役員の場合
・親族の経営している会社からの給与所得の場合
・個人事業主で、自分で決算書を作成している場合
・同居している家族が個人事業主で、決算書を作成している場合
どれだけ書類多いんだ!と嘆きたくなる気持ちも分かりますが、ここは一踏ん張り。
帰化申請は、そもそもサクッと済むものではありません。何せ、国籍が変わるのですから。
とりあえず、会社員よりも提出する書類が多いことはお分かりいただけたかと思います。ではここからは、チェックされる重要項目を事前に把握していきましょう。
チェック項目を把握しておくだけでも、申請許可が下りる確率が上がりますよ。
帰化申請の基本的なチェック項目
まずは、基本的な帰化申請のチェック項目を確認していきましょう。これらの項目は会社員であろうが事業主であろうが関係ありません。“日本人になるのであれば、最低限これらは満たしてね”という項目です。
・日本に5年以上住み続けている
・成人(20歳以上)である
(親と一緒に申請する場合は未成年でもOK)
・素行に問題がないこと
・きちんと納税していること
・法律違反がないこと
・日本で生活できる所得・資産があること
・重国籍にならないこと
・生活に困らない程度(小学校3年生程度)以上の日本語能力があること
これらを満たしているかどうかは、提出された書類を中心に様々な観点からチェックされます。次項では、社長や個人事業主の場合に会社員よりも重点的にチェックされる項目(赤字の項目)をそれぞれご紹介していきたいと思います。
ココに要注意!事業主の帰化申請時にチェックされるポイント
では、社長や個人事業主が気を付けなければいけない重要チェック項目を2つご紹介していきたいと思います。ややこしい!と感じるかもしれませんが、帰化の許可を得るために必要なことですので、ぜひ最後まで目を通してください。
(重要チェック項目1:きちんと納税していること)
納税状況は非常に重要なチェック項目の一つです。納税したお金は国の資金源になるので、迎え入れる側としては、より多くのお金を納税してくれる人を帰化させたいはずです。逆に言うと、納税しない人をわざわざ帰化させるメリットはない、ということです。(失礼な言い方ですみません…)
必要書類のところでもご紹介したように、社長や個人事業主は会社員よりも納税関連の提出書類が多いですよね。書類を提出させるということは、もちろん“入念なチェック”が入ります。
例えば、会社員の場合は「住民税」と「所得税」をきちんと支払っていればOKですが、社長や個人事業主の場合は、この2つの他に「消費税」「源泉所得税」もチェックされます。
(重要チェック項目2:日本で生活できる所得・資産があること)
生計要件も重要なチェック項目です。日本人になるのに日本で生活できる資金力がないのは本末転倒ですよね。筆者のアメリカ人の知り合いが、“帰化申請したいけれど、今は転職したてで給料が少ないからできない…”と言っていたことがあります。彼は事業主ではなく会社員ですが、やはり国としてはきちんと稼いでいる人を帰化させたいのです。
会社員の場合、税金が天引きされていることが多いので自分の給料を把握しやすいですよね。しかし、社長や個人事業主の場合は、営業利益(売り上げから原価と経費を引いた金額)が手取りとなり、生活費となります。節税のために範囲を超えた経費を計上している方は、営業利益が少ないと見なされ日本で生活はできないだろう…と審査落ちする可能性もあるので注意してください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
社長や個人事業主の帰化申請が“難しい”というよりは、申請に必要な書類が会社員の方よりも必然的に多くなるため、チェックされる項目が増えてしまうということなんですね。
“審査が厳しいから通らないかも…”と躊躇っている方は、あまり不安がらずぜひチャレンジしてみてください。不安な方は帰化専門の行政書士事務所への相談がおすすめです。